お正月にお休みが思いのほかあったせいか、思わず宮部みゆきの「あかんべえ上下」を買ってしまいました
面白かった
私はお風呂で本を読む癖があるんですが、全部読みたくてのぼせそうになった

私は負の感情は好きです
たぶん、自分において欠陥だらけの負の感情ひきよせマニアだからだと思いますが弱い人間大好きです
逆に努力家の物凄い強い人間も大好きですが。

お化けがでてくる話なのですが、そのお化けが皆何かしら欠点があって現世に残ってるの。
私はお化けとか全く信じない方なのですが、「あかんべえ」ではお化けが見えてるおりんを凄く応援してたよ
でも、私もきっと七兵衛タイプ。
見えないから信じない。

でも、こんなお化けならいてもいいなと思いました。
心優しいお化け達。
でも、それは主人公であるおりんが愛おしい存在だからかもしれない
人との付き合い方だってそうですよね
可愛い人にはやっぱり優しくするし応援もする
だから、お化け達もそうなのかもしれない
お化けになったってそれは一緒
そんなお化け達は何処か記憶を無くしていて成仏ができない。
そんな記憶を探そうとおりんはお化け達に懐き一生懸命頑張る
子供ながらに健気にね
頭もきれる子だし、素直だしおりんは良い娘になると思うよ

そんなおりんに負の感情が襲いだす
お化けである亡者からも、人間からも。
人間、誰にだってある感情。
うらやましいな、何であの人だけ幸せそうなんだろう
別に自分が不幸でなくても隣の花は赤いからね
ただ、それを皆押さえ込んで生活してるんだけれども彼達にはそれができなかった。
ある人は弟をある人はお父さんをある人は女をねたましくてねたましくて仕方がなかった
それ以外、何も見えなかった

ネタばれ注意。
私は特におつたっていう女が可哀想に思えた
おつたは働き者でしっかりしてておりんにも優しくて良いおばさん
それは演じてただけじゃなくて何処かに真実もあったと思う
それでも、彼女は恋によってどうにかなってしまう
おりんの父親に恋をした
父親になる前から恋をしてた
それなのにおりんの母親に父親を奪われ、それでもなお恋をしていた
大好きで大好きで
そう思ったら母親が憎かった
憎かったけどおつたは良い人をきちんとやっていおた
母親にも慕われおりんからも懐かれていた
凄いよね
だって、普通憎かったらそんな事できないよ
あからさまになっていってしまう
それでも良い人間でい続けていた
それでも、おつたはおりんの父親が大好きだった
辛い日々だろうなって思う
目の前でいちゃつかれたり、楽しそうにされたりするのよ
近くにいなければまだいいけど、物凄い近くにいてずっと好きだったら地獄よ
父親よりおつたは随分上だ
だから、自分には似合わないって姉さんはいう
それでも、好きならどうすればいい?
そりゃあ、そうするしかないと思う
おつたはどうにか父親を手にいれようとする
好きなんだから良いじゃないと。
父親に気にいられおりんにも懐かれようと努力する
決してあからさまじゃなく、父親の愛を手にいれようと母親をはめていく
上手くいかずに、ある日母親を殺そうと考える
あいつさえいなけりゃうまくいくそう思ったんだろうね

それはもう愛なのかはわからない
きっと愛もあっただろうけれども、憎くなっちゃうんだと思う
それじゃあ、あまりに自分が可哀想すぎる
そうも思ったんじゃないかしら
何であの人は幸せそうなのに、何で自分はこんなに惨めなんだろう
自分だって同じぐらいあの人を慕っているのに
そう思ったら苦しくて苦しくてたまらなくなくなって自分じゃ抑えられなくなってたんじゃないかしら?

彼女は良い人をしてたから余計に

でも、目を覚ました
自分は物凄い恐ろしいものになろうとしてるんじゃないかと気付いて、亡者によって目を覚まして出て行く
此処にいてはいけないと気付いて出て行く
うん、良いと思うよ
世界は広いんだもん
それだけしっかりものならば世界でも通じるはずだ
ずっと、その痛みと戦っていくなんて悲しすぎる

お化け達も自分の過去を思い出し成仏するんだけど、お梅は悲しかった
彼女が一番可哀想だと思う
死っていうのは終わりのはずなのに死んでからなお一人ぼっちで苦しむ
死んでなお叫び続ける
自分が求めてるのは成仏じゃない
自分が求めてるのは仏様じゃない
たった一人だ
一人ぼっちで子供ながらにそれを叫び続けてるのに、肝心の人はちっとも気付いてくれない
気付こうとさえしない

最後まで彼女の心に近づこうとはしなかったんじゃないかな
それでも、彼女は連れて行く
今度こそは一緒にいて欲しい
目を覚まして欲しい
此処にいてはいけないと

寂しい娘だなと思った。
そして、強い娘だなと思った。

あかんべえ。
それで良いと思った。

コメント